合同会社(LLC)とは

合同会社(LLC)とは

アメリカなどでは既に株式会社に匹敵するくらいに利用されているのがLLC(Limited Liability Company)と呼ばれる会社組織です。
簡単に言うと株式会社が「物」を主体に考える会社とすると、合同会社は「人」を主体に考える会社という事です。

株式会社ではお金を出した(出資した)割合によって会社の利益が配当されます。
昨今のビジネスは物(お金)よりも『人』が利益を生んでいるのではないか?という考えが出てきました。
人が有する知識やノウハウ・技術こそが利益を生んでいるという考え方です。
『必ずしも物(お金)を出した人だけが利益を享受するのではなく、知識・ノウハウ・技術を提供している人も利益を受け取る仕組みを持った会社があってもいいのではないか。』という思想からLLCが生まれました。

ですから、日本版LLCと呼ばれる合同会社でも、出資を多くした人だけが配当を多く受けるという形を取らないことも出来ます。
たとえば、お金は少ししか出資していないけれども(極端な話、1円しか出資していなくても)、優秀な技術者であるその人がいればこそ会社の利益が生まれるという人材がいれば、定款によってその人に多くの利益配当の権利を付することも可能になります。
いわゆる「定款自治」と呼ばれるもので、法律に縛られるのではなく、そこの会社で利益に関する規定さえも柔軟に設計できる会社制度です。

お金は持っていないけど能力を持つ『人』と、お金を出せる『企業』が共同で合同会社を設立するという事例が多く出てくると考えられます。
従来であれば、多くお金を出した企業だけが会社の所有者であり会社を自由にし、利益を享受していたのですが、お金を出した企業と能力を提供した人が対等な立場で会社を経営できることになります。

株式会社と同様に、一人で設立することが可能で、資本金も1円からでも大丈夫です。
会社法による規制も株式会社ほどに厳しくありませんので、自由度の高い組織運営が可能となります。

もちろん、株式会社と同様に許認可も受けることが可能です。
何かしらの制約(許認可など)により、仕方なく法人化しなくてはならない場合など、小さくビジネスを始めたい方にとっては、とてもお勧めの会社形態が合同会社です。

合同会社は「出資者」と「経営者」

株式会社との最も大きな違いは、合同会社は「出資者」と「経営者」が同じということです。

株式会社は基本的には株主(出資者)がいて、その会社の経営は別の者(取締役)が行うという所有と経営の分離というスタンスを取っています。
(※小規模の株式会社の場合、株主と経営者が同じ場合が多いですが…)
この最大のメリットは、出資に関係なく経営に優れた人に取締役として会社の経営を任せられる事です。

その点で合同会社は、基本的には「出資者」と「経営者」が同じです。
合同会社の社員というのは、従業員の事ではなく会社に資本金を出資し、経営を行う者のことです。出資をしなければ社員にはなれません。
合同会社では、原則として「社員」全員が業務執行権・代表権を持っていますので、「社員」が全員で経営を行ないます。

しかし合同会社には「定款自治」といって、定款で定めれば自由な機関設計ができるという点があるので、
社員が複数いる場合においては、一部の社員だけに業務執行権・代表権を与え、業務執行社員を選ぶことも可能です。(※株式会社でいう「取締役」)
業務執行社員を設置すると、業務執行社員以外の社員については、実質的には、出資だけを行うことになります。

また業務執行社員の中から「代表社員」を決めることもできます。(※株式会社でいう「代表取締役」)
ですから株式会社と同じような機関構成(社員=株主、業務執行社員=取締役、代表社員=代表取締役)で会社を運営することも可能です。

合同会社の社員の資格について

合同会社の社員の資格には、破産者や成年被後見人を除けば特に制限はありません。未成年者も合同会社の社員になることができます。ただし、未成年者が社員になる場合は、法定代理人の同意が必要になります。この場合、未成年者でも、社員たる資格に基づく行為については能力者とみなされます。
法人であっても社員になることは可能です。
ただし、法人が業務を執行する社員になるには、その法人は、自然人(人)を職務執行者として選任する必要があります。

社員の加入・退社

社員の加入

合同会社における社員の加入には2つの方法があります。基本的に社員を新しく加入させるためには、定款の変更が必要なため、社員全員の同意が必要です。

  • 新しく出資することによる加入

    新しい社員の加入は、定款の変更と出資の履行が完了した時に加入の効力が発生します。
    合同会社の社員の加入は、社員の追加と資本金額の増加ということになりますので、「社員追加と資本金額変更の登記」が必要になります。


  • 持ち分の譲受による加入

    持ち分の譲受による社員の追加の場合には、新たな出資は必要ありませんので、資本金額も変わりません。
    また、払い込みの手続きも必要がないため、新たな社員の出資による追加よりも簡単な手続きで済みます。

社員の退社

合同会社の社員が退社をする場合には、退社する社員は持ち分の払い戻しを受けることができます。
そして、その分資本金が減ることになります。
資本金を減額する場合には、会社の債権者に公告や催告を行なう必要があります。

 設立にかかる費用

株式会社と合同会社の大きく違う点としては設立にかかる費用があります。

合同会社は定款を作成しても、公証人による認証が不要であり、登録免許税も6万円と格安な為、その分安く設立することができます。
設立費用は、株式会社の場合は約25万円(法定実費のみ)かかるのに対し、合同会社の場合は10万円(法定実費のみ)で設立できます。半分以下の費用ですみます。

このように、起業時はなるべくコストは抑えたいとお考えの方は合同会社がお勧めです。

株式会社合同会社
定款に貼る印紙代4万円4万円
公証人の手数料等約5万2千円不要
登録免許税15万円6万円
合計24万2千円10万円

※ご自身で手続きされる場合(紙の定款の場合)には、4万円分の印紙が必要になりますが、専門家に依頼して電子定款認証を利用すると印紙代4万円が不要になる為、6万円(専門家報酬は別)で設立が可能です。