会社の設立のためには、会社の本店所在地を決める必要があります。いわゆる本社の住所ですが、会社法上は本店と呼びます。
本店所在地によって、定款の認証を受けられる公証役場、会社設立登記申請を行う法務局が決まります。
本店所在地の都道府県内の公証役場で認証を受け、所在地を管轄している法務局に登記申請を行います。
本店所在地は日本国内であればどこでもかまいません。そして本店所在地と実際に設立する会社の事業活動の場所が違っていたとしても問題ありません。
ただし、安易に決めてしまうと、本店を移転しなければならなくなった時に登記変更手続きを行う必要性が発生しますので、その場合費用が3万円~6万円はかかります。ですから、なるべくなら変更する必要がないように決めた方がいいでしょう。
また郵便物が受け取れる場所であることは重要な要件になります。
本店をどこに決めたとしても多少のメリット・デメリットはあります。注意事項等、以下順番にみていきましょう。
自宅
自宅で開業する場合には、自宅を本店とされることが多いでしょう。
自宅を本店とする場合、持ち家であれば問題ないですが、賃貸物件のときには注意が必要です。
賃貸借契約上に「居住用」となっている場合、契約違反等で後にトラブルになる可能性があります。そうならないように本店登記を行う前にオーナーに了承を得ておくことが大切です。
なお、自宅開業でない方でも自宅を本店とする方もいらっしゃいます。
事務所の移転の度に、本店移転登記をすると費用がかかるというリスクを避けるために自宅を本店とするようなケースです。
役所や銀行などからの郵便物が本店である自宅に届きますので、それがわずらわしいというデメリットもあります。
会社設立にあたって借りた事務所
この場合、2つの方法が考えられます。
1つ目は、最初に個人名義で契約をしてから、会社設立をして、その後に名義変更するという方法です。
この方法で賃貸契約を結ぶ場合、会社設立の本店所在地として使用することを事前にオーナーに伝えておけば他に特に問題はないのですが
名義変更料が必要になり、余計な手間と出費が増えるというデメリットがあります。
もう1つの方法は、会社名義で仮契約をしておき、会社設立後に本契約を結ぶ方法です。
これなら、余計な手間やお金はかかりません。この場合オーナー(不動産屋)が、それでもいいよと納得してもらう必要はありますので、不動産屋よっては対応が違うかもしれません。
レンタルオフィス
レンタルオフィスはSOHOオフィスなどとも呼ばれ、起業者に向いているオフィスです。業務に必要となる椅子や机、コピー機、会議室などの設備が整っているオフィスの一部(個室やパーテーションなどで仕切られた専用ブース)を賃借できるオフィスのことを言います。
メリットとしては、立地条件がいい事や賃料の3ヶ月分程度の保証金で良いため、初期費用を安くすることができます。また、一般的にデスクやオフィスチェアーは常設されているため備品購入の費用もあまりかかりません。また会議室等の施設を利用することができるなどあります。
また比較的簡単に法人口座を開設することができたり、法人登記も可能な場合が多いです。
バーチャルオフィス
バーチャルオフィスとは、起業して事業を始めるにあたって最低限必要な住所や電話番号、FAX番号などをレンタルすることができるサービスです。一般的なオフィスと違って業務を行うスペースはありません。基本的には住所や電話番号だけを借りることになります。そして、郵便物や電話は、バーチャルオフィス側に届くと、自動で設定した住所や電話番号に転送されるようになります。
会社登記をしても問題ない場合が多いですが、契約前に必ず確認するようにしましょう。
起業の選択肢の一つとして初期費用を安く抑えられるバーチャルオフィスですが、以下のようなデメリットがある事を考慮しておきましょう。
- 法人銀行口座の開設
銀行口座開設を断られてしまうケースが非常に多いです。会社の法人口座がないと取引ができない企業も多いのでこれは大きなデメリットです。 - 社会保険や雇用保険の申請
銀行口座と同様にバーチャルオフィスだと社会保険・雇用保険の申請はできないと考えておきましょう。 - 許認可の取得
建設業許可や古物商などの許認可を取得できない可能性があります。許認可が必要な事業をする場合はあらかじめ確認しておきましょう。 - 創業融資
創業融資は設立直後の会社にとっては、有効な資金調達手段です。しかし、バーチャルオフィスの場合は、事業としての実態がないとみなされて創業融資が通らなくなる可能性があります。 - 他社と住所が重複する可能性がある
バーチャルオフィスは複数の会社が利用しています。そのためバーチャルオフィスの住所で検索すると別の会社が表示されてしまいバーチャルオフィスであることが発覚する可能性があります。
本店所在地を登記する際の記載
番地は -(ハイフン)で省力せず、正式な住所を登記します。
例)静岡県静岡市葵区○○町1丁目4番10号
わからない場合は市役所等に聞けば、教えてくれます。
ビルやアパート、マンション名、部屋番号は入れても、入れなくてもいいです。
例)次のどの表記でも登記上は問題ありません。でも建物内の移動や名称の変更などあってもいいように、3番目が無難かもしれません。
- 静岡県静岡市葵区○○町○丁目○番○○号○○ビル○○○○号
- 静岡県静岡市葵区○○町○丁目○番○○号○○ビル
- 静岡県静岡市葵区○○町○丁目○番○○号
定款に記載する本店所在地
定款に記載する本店所在地は、最小行政区画まででよいとされています。ですから住所の番地まで載せなくていいのです。たとえば「静岡県静岡市」までとします。そうすると、静岡市内での本店移転は、定款変更という手続を踏まなくていいので、とても簡単です。
定款変更は、株主総会の特別決議が必要なので発行済株式総数の過半数に当たる株主が出席し、その過半数の賛成が必要となるため、株主が多くなると大変なのです。
定款は会社の憲法ですから、株主の利害に関係するようなことを変更する時は、厳格な手続きを踏まなくてはなりません。
この場合、定款変更は必要なくても、法務局には変更登記申請を行う必要がありますのでその点には充分注意しましょう。