現物出資のメリットとデメリット

会社設立登記申請の際は、手軽に行える500万円以下の現物出資ですが、会社設立後にしなくてはならない手続き等もありますので、メリット・デメリットを比較してご検討下さい 。

現物出資のメリット

資本金を大きくすることができる。

資本金は会社の信用力を見る一つの重要な指標と言えます。

新会社法により株式会社は従来の資本金1000万円以上というハードルが無くなった為、実質1円でも設立することが可能となりました。ですから株式会社であることそれ自体が信用とはならなくなりました。そこで取引先として調査するには、資本金を比較する事もあると言えます。取引内容や条件が同じであるならば、資本金が30万円の会社と600万円の会社ならどうでしょうか?

また、金融機関からの融資を受ける際も、資本金の額は融資判断材料の一つになりますので、資本金は少ないよりも多い方が、より融資を受けられる可能性が高くなると言えます。

出資した現物を経費計上できる。

毎年の決算において会社は利益に応じて法人税や法人地方税を支払います。
会社設立で現物出資を行った場合、その出資した現物は減価償却という方法で数年間に分けて経費にすることができます。ですから、現物出資は自動的に節税対策にもなるともいえます。

現物出資のデメリット

会社のお金が増えるわけではない。

当然ですが、実際に会社に資金が増えるわけではありませんから、たとえ資本金が500万円あったとしても現物出資が400万円であるなら、実際使える資本金は100万円です。売上の入金があるまではそれで運営しなくてはならないのですから、キャッシュフローを考慮しないと大変です。

所有権移転の手間と費用がかかる。

現物出資する財産として定款に記載し、公証人役場で認証を受けたものについては特段の事情がない限り、会社設立後に遅滞なく名義変更や所有権移転の手続きを行わなければなりません。この手続きに手間と費用がかかります。

金銭出資の場合は、お金は振り込むだけで手間はかかりませんが、車や不動産を現物出資した場合は会社設立後にそれらの名義変更、所有権移転の手続きが必要になります。車の場合は会社名義の車庫証明取得と、運輸支局での名義変更手続きが必要です。
税金面では、自動車税や自動車取得税が会社(法人)にかかってきます。
また、現物出資を行った個人(株主)に対しては譲渡所得税がかかる場合があります。

不動産の場合は、所有権移転登記申請などの手続きが必要でご自身でなさるのは少々大変かもしれませんし、登録免許税等も数万円~数十万円かかります。また専門家に依頼すればその手数料も数万円かかります。
税金面では、不動産を取得した会社(法人)側には不動産取得税や固定資産税が後に課税されることになります。

一番多い自家用車を現物出資した場合の手続きの流れ

  1. 車検証で「所有者が誰になっているか」を確認します。
    株主本人名義であれば問題ないのですが、諸事情で名義がご家族名義になっている場合は注意が必要です。
    例えば奥様の名義であれば、その現物出資に関しては基本的に奥様が株主ということになります。
    あとその車にローンが残っていないかの確認も必要です。
    ローンが残っている場合、所有権留保という状態で所有者がローン会社になっているはずです。もし所有者が発起人名義になっているとしても、少なくともローン完済までは名義変更はできません。現物出資では会社設立後、遅滞なくその財産の名義変更手続きを行う必要がありますので、基本的にローン中の車は現物出資に適しません。
  2. 車の評価の決定をします。
    財産評価における基本的な考え方は「時価評価」です。
    この点、中古車に関するホームページは非常に多く、車種と年式からおおよその相場もわかるようになっていますので、非常に評価のしやすい財産であると言えます。
    それらに記載されている相場の金額で大丈夫です。
    ※できれば相場の中央付近の金額にしておくことをおすすめします。
  3. 会社設立後に会社名義に変更する。
    車の名義変更は、警察で会社名義の車庫証明取得して運輸支局で移転登録となります。
    手続きの金額的には数千円でできますが、お時間のない方は行政書士に依頼する場合その手数料も必要になります。